ダイブ
子供の頃 私はよく転ぶ子で、
ちょっと走る度に「転ぶわよ!」「気をつけなさいよ!」という声が飛んできたものだった。
でも大人になると、人は誰でも転ばなくなるのだろうと思っていた。
特に根拠はない。
でもそんな甘い考えを覆すことになった。
今日、見事にすっ転んだ。
スリッパを脱ごうとした瞬間に、左足のズボンの裾に右足がひっかかった。
一瞬中に浮いて、床に叩きつけられた。
鈍い、大きな音がした。
ひざをすりむいて、今は少し腫れて赤くなっている。
あまりに「転ぶ」という行為そのものだったので、
面白いと思うと同時に感動した。
こんなにもはっきり転ぶことが、この歳になってもあるんだなぁ、と。
ところで、転ぶってすっごく痛いよね。
なんだこの頭悪そうな発言。と思うだろうけど、本当に痛いよ。
試してみるといいよ。その痛みを思い出せない人は。
高校時代、雨の日にタイル張りのようになった地面を歩いていて、
ついうっかりスキップしてしまったときのことを思い出した。
あるでしょ、雨が降るとやたら滑る駅の出口とか、そんな感じの場所。
そういえばあのときもかなりアクロバティックに転んで、
ひざを痛めてしばらくつらかったな。
目撃者がいなかったことが救いだった。
自分ひとりでだいぶ笑った。
今でも思い出すと笑ってしまうので困る。
バスとかエレベーターの中にいるときに限って蘇ってくるからイジワルだ。
大人になっても転ぶ人は転ぶのか。
よくわかった。気をつけよう。
しっかし見事な地球へのダイブだった。



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